先日、久しぶりに本屋さんへ。
置き場所もなくなってきたし、懐も淋しいので
あんまり近寄らないようにしていました
お貸ししていた本が帰ってきたものとか
これからお貸しするものを吟味しながら読み返したり
なんとかしのいできたものの、やっぱり我慢ができず
新刊の文庫を数冊買ってきちゃった
さて、また置き場所に困るぞ
その中の数冊をご紹介。
『上野池之端 鱗や繁盛記』
（西條奈加著/新潮文庫）
『口入れ屋おふく 昨日みた夢』
（宇江佐真理著/角川文庫）
『リバース』
（五十嵐貴久著/幻冬舎文庫）
『リバース』は、ワタシ史上
後味悪い恐怖小説ランキングベスト3に入る
『リカ』のシリーズ。
題名にひかれて買ったらとんでもない代物でした（笑）
続編だった『リターン』につづく、第3弾になりますが、
こちらはグッと遡った過去のハナシ。
最強で最恐で最凶のストーカー・リカ誕生の物語。
正直、途中でオチが分かっちゃったけど。
あ～～～～～、それでも十分、後味が悪い。
『リターン』はイマイチだったけど、
この『リバース』の気色悪さ、怖さは、
かなり『リカ』に近いものがあります
何度か書いたと思いますが、
この五十嵐貴久さんって作者さんはホント不思議。
作品ごとに全然雰囲気が違います。
だから、面白いものとハズレの差も大きいけど（笑）
『上野池之端 鱗や繁盛記』はよかった～。
まぁね、高田郁さんの『みをつくし料理帖』の
二番煎じって気もしないではないですが・・・
それでも、西條さんならではの良さがそこここにキラリ。
途中からグングンとミステリー要素が深まっていく流れも、
1冊という短い世界の中で、
登場人物がちゃんと書き込まれているのも、いい。
シリーズ化しなかったのがもったいないくらい。
（続きのハナシも書けそうですが。）
しかし、みをつくしのヒット以降、
時代小説の設定に食べ物を持ってくる人が増えていて
あまりの露骨さに、ちょっと辟易しちゃいます。
二匹目のドジョウ、狙いすぎでしょ、みなさん（笑）
『口入れ屋おふく 昨日みた夢』は、ドキドキしながら購入。
宇江佐真理さんの作品は、晩年になり、
正直、当たり外れが激しくなってきた気がしていて。
この小説は、どうなのかなぁ～って。
宇江佐さん、乳がんを発症されて以来、
作品の質が変わってしまったというのかしら。
元々、人間を少し斜めから見てるようなところはあって。
ただのいいヒトじゃなく、邪な心も持ち合わせている人も
出てきてはいたけど、それが顕著になってきて、
どうも後味の悪い、ざらりとした気持ちにさせられたことが
何度かあったんですよね～・・・
まぁ、もちろん。
善人ばかりが出てくるようなお話じゃぁ、
夢物語すぎて、ちっとも面白くないんだけど。
早く読みたいような、怖いような気持で読み始めましたが
うん、これは、大丈夫でした。
宇江佐さんらしい、ちょっと皮肉な感じの
人と人との描き方もあったけど（笑）
それでも、根底にはちゃんと温かさが流れていました。
生きてるって良いことばっかりじゃないけど、
それでも、前を向いて歩いていくっきゃないし、
誰かを支えて、誰かに支えられて、
持ちつ持たれつで暮らしていくんだなぁって。
人の暮らしって、そういうもんだよなぁ。
しみじみと、じんわりと沁みてくるようなお話しでした。
ワタシがこんなことを言うのも生意気だけど。
病気が発覚して以来、
混乱とか、絶望とか希望とか、いろんな感情を
日替わりでくるくると持て余しながら日々を過ごしていく中で、
生業でもあるし、物書きとしての業でもあるから
物語を綴り続けていたんだと思うんですね。
そんな中で吐き出された言葉、紡がれた物語って、
宇江佐さんの生きた日々そのもので、
苦しい時、辛い時、恨めしかった時、希望を抱いた時、
それがお話しにも反映していたんじゃないだろうかと。
どの時期に、どの物語が書かれたかは分からないけど。
このお話を書いているときは、
ある意味、達観した気持ちになれていたんじゃなかろうか。
すごく穏やかなキモチで、あるがままを受け入れて、
自分のまわりの生きとし生けるものが
美しく愛おしいって想えていたんじゃないだろうか。
宇江佐さんは、この口入れ屋おふくのお話しを
シリーズ化するつもりで書き始めていたんだろうな。
もっともっと読みたかったなぁ。
本日の満点度：☆☆☆☆☆/5
