勢いに乗って、もう1冊ご紹介。
(1冊ではないので、1シリーズですね)
『日本橋牡丹堂 菓子ばなし』シリーズ
(中島久枝著/光文社時代小説文庫)
『いつかの花』、
『なごりの月』と続き
3作目の『ふたたびの虹』が最近刊行されました。
主人公は鎌倉のはずれから江戸に出てきた女の子。
「お菓子が好きだから職人になれたらいいな」
たまたまご縁があったために、その希望が叶えられ、
日本橋の小さなお菓子屋さんで働き始めます。
う~む・・・
なんと説明したらよいでしょうか・・・。
時代小説の女性主人公にしては、
珍しいほどの、このぼんやりとした感じ(笑)
女性の職人さん(髪結いさんとか)もいたけれど
女の子は早めに嫁に行って、こどもを生んで育てればいい
そんな考えがほとんどだった時代だからこそ、
これまで時代小説で描かれている女の子って、
もっと根性があったり、才能に溢れていたりすることが多いのに。
この小説の主人公、あれこれ考えすぎちゃう性格もあってか
「絶対に職人として成功するんだ!」っていう気概が
ま~ったく伝わってきません(笑)
ある意味、その設定は斬新だなぁ。
でも、いまの時代にいくらでもいそうな女の子。
だから時代小説を読みなれていないヒトでも、
そして若い方でも読みやすいんじゃないかなと思います。
正直、1作目は、ワタシにはどうも物足りず。
捕り物系ではないので、大きな事件も起きません。
人情ものというにも、盛り上がりが欠けるなぁって
ちょっと辛口かもしれないけど、思っていました。
だけど、文章はとても読みやすいし。
和菓子の説明がとっても巧み。
(フードライターの経験が活かされているんでしょうね)
お菓子を作り出す工程や、登場人物の造形も、
丁寧に描かれているので、きっと面白くなるはずと
続きものを読むことにしたんですけどね。
3作目、いい意味で化けた感じがします。
文章も物語の進め方もとても練れてきました。
今作で初めて、読みながら泣きました。
(ワタシの涙腺は脆いので、参考にもなりませんけど
)
主人公の目線で物語が進んでいくので、
彼女自身の成長ぶりにつれて、
周りの人への観察力、洞察力の描写が
深めることができてきたからかなぁとも思います。
『みをつくし料理帖』の大成功のおかげで
いま時代小説界には女性の書き手が増えたのはもちろん、
料理人や料理をテーマにした小説が
ビックリするくらいあふれかえっています。
時代小説に料理小説という新たなジャンルを拓いた
高田郁さんの功績って、ほんとスゴイと思います。
(料理はあふれているからなのか)
和菓子がテーマの小説もすごく多くって、
全部に手を出すのはとてもできない状態なのですよねぇ
それでもあれこれ手を出しているのですが。
あぁ、読んでよかったと思える1冊には
正直、なかなか出会えないんですよね・・・。
この牡丹堂シリーズ。
刊行をまちわびるシリーズになってくれるといいな。
本日の満点度:☆☆☆☆☆/5