天地明察

本屋大賞受賞、この秋には映画化と話題の1冊。

天地明察

『天地明察』
(冲方丁著/角川文庫)


この作家さん、この作品までは名前、何て読むんだろうって思っていました。
本屋大賞受賞で一気に、有名になりましたね。
ちなみに、“うぶかたとう”さんというそうです。

金環日食の日に読み始めるつもりが、その日はなんやかや忙しく、
結局、翌日から読み始めることになりましたが…
まさにタイムリーな1冊だったのですね。

できれば、金環日食前に読んでおきたかったな。
ただ空を見上げるだけでなく、先人の苦労、努力や研鑽への想いを強くして
黄金のリングを眺めることができた気がします。

あまり予備知識なく読み始めたのですが、男性陣からのオススメされたのがよくわかる。
実に、男の人が好きそうなお話でした。
ある意味、マニアックな世界。

天体とか、暦とか算術とか…うろ覚えの三平方の定理的な話が出てくるので、
そのあたりに興味も知識もない人間には、その辺で突っかかっちゃうかもですね涙

主人公の渋川春海が、大和暦を作り出すまでがかなり長くて、
肝心の改暦という一大事業に関わってからは、わりとあっさりと書かれています。
そこの辺りが読んでいて、拍子抜けする感じもありましたが。
逆にそこが割愛されてるのが、小説的には成功でしょうか。
(でも映画になるとどうなんだろう…説明不足感が心配キャー

正直、時代小説の王道である池波正太郎さん、山本周五郎さんはじめ、
さまざまな時代ものを読みあさってる私からすると(←偉そう、笑)、
江戸の情緒的なものが、一切書かれていないのが、物足りなく、
きっと江戸ものを書かれるには(時代的にも資料が少ないのかもしれないけど)
まだ十分に勉強をされていないのかなぁとも思ったのです。

でも、この小説の主題は江戸情緒ではないからそれでいいのです。

現代人がさほど重大と思っていないけれど、
じつはかなり重要であった改暦という、一大事業に目をつけた着眼点が面白い。

そして、何よりも、出てくる人物たちが実にキモチいいのです。
主人公の渋川春海も、淡々とし過ぎていて感情移入はしにくいものの、
なんとも爽やかで、まっすぐで、美しいヒト。

そして彼が出会う人物たちの、大きいこと。

小説としては物足りない部分もあったけど、私は、彼らに出会えただけでも十分に満足。
今の時代に、こういう生き方ができている人たちがどれだけいるんだろう。

未熟だった春海にかける、先人たちの言葉の一つ一つ、
いつくしみの想いのひとつひとつが、じんわりと心に沁みました。

そして、やり遂げることの重みと大きさも、わが身を振り返って反省というか…
事の大きさは全く違うけど、自分自身が使命だと思っていることを、
北極星はひとつと定めて、とにかく、自分にできることをやるしかないんだよなぁ。

いつか、自分自身に「天地明察」といってあげられるように。

本日の満点度:☆☆☆☆/5



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