続けてまたもやホンノハナシ。
第138回直木賞受賞作です。
『私の男』(桜庭一樹著/文春文庫)
う~ん、どろどろ。
分かっちゃいたけど、決して読後感の良いお話ではありません。
それでいて、暗く、陰鬱な独特の世界観に絡めとられて引き込まれてしまう。
そんなお話。
実生活でとことん楽天的に生きたいと思ってる私には、
どこにも救いが見つからないタイプの小説は
好きか嫌いかって言われたら、嫌いなタイプなんですが。
主人公の花やその養父、淳悟の、人間として決定的に欠けている何か。
その欠けてる欠片をお互いの中に見つけてしまって、
2人はつながることでしかその欠片を埋めあうしかなかったのかもしれない。
少なからず質は違えど、私にも、欠けている部分があるわけで。
完ぺきな人間なんて、そうはいないのだし。
だから私も、かけてる欠片を求めているのかもしれなくて。
だから、読みたくない、知りたくないって思いながらも、
花と淳悟の過去をたどる旅のように綴られる物語を読み進めていったのかも。
禁忌を超えた親子、花と淳悟の「いま」から、2人の出会った花9歳の時まで、
15年の時を物語は静かに暗く遡っていく。
その手法は珍しいものではないのかもしれないけど。
語られるべき想いが語られていなかったり、
知りたいと思う結果が曖昧であったり、どことなく消化不良でありながら、
それを読者に考えさせるこのもやっとした世界観が“文学”ってヤツなんだろうか…
とも思ったり。
好きか嫌いかって言われたら、嫌いなんだけど。
嫌いなのにどこか惹かれていつもどこか気になってしまう…そんな人がいるように、
この作家さんの作品もこれから、チェックしていくことになりそうです。
本日の満点度:☆☆☆/5